単純化するうまさとずるさ[人文的なもの]

文学がこんなにわかっていいかしら

文学がこんなにわかっていいかしら

どういう本かというと、高橋源一郎が文学にブンガクを感じたり、アダルトビデオにブンガクを感じたり、ドラクエにブンガクを感じたり、する本です。




高橋源一郎って、僕は好きなんですけど

なんかなぁ、最近ズルいって思うようになりました。いや、好きなんですけど。

高橋源一郎はとにかく、自分の好きなものを「ブンガクだ」って言って喜んで

「なぜそれがブンガク的か」という理由づけもそれなりにちゃんとやる

そういう人なんですけど。

それはつまり、おもしろいと思ったそのおもしろさってものを

純化して

「ブンガク」の中に吸収しちゃってるわけですよね。

それを、うまいなあ、とも思うけれど

ずるいなあ

とも同時に思うわけです。




よくわかんないですけど

よくわかんなくておもしろいものがたくさんあるので

それについて話すときは、いちいちそれに対してこう、

本気で、マジで

がんばる必要があると思うのですけれど

「ブンガク」という言葉は便利すぎるので

「これもひとつのブンガクなんですよ」と言われると、なるほどなあと思う部分もあったり。

けどそういうことばかりしていると

「ブンガク」という言葉というか、「ブンガク」というものの実態というかが

路頭に迷っていくことになるのですよね。

そして高橋源一郎は、それをまた追いかける。

なんでもかんでもブンガクに引き寄せて、ブンガクが路頭に迷ったところで

自分でブンガクを探しに行く。

楽しそうで

いいんですけどね。