単純化するうまさとずるさ[人文的なもの]
- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 福武書店
- 発売日: 1989/04
- メディア: 単行本
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高橋源一郎って、僕は好きなんですけど
なんかなぁ、最近ズルいって思うようになりました。いや、好きなんですけど。
高橋源一郎はとにかく、自分の好きなものを「ブンガクだ」って言って喜んで
「なぜそれがブンガク的か」という理由づけもそれなりにちゃんとやる
そういう人なんですけど。
それはつまり、おもしろいと思ったそのおもしろさってものを
単純化して
「ブンガク」の中に吸収しちゃってるわけですよね。
それを、うまいなあ、とも思うけれど
ずるいなあ
とも同時に思うわけです。
よくわかんないですけど
よくわかんなくておもしろいものがたくさんあるので
それについて話すときは、いちいちそれに対してこう、
本気で、マジで
がんばる必要があると思うのですけれど
「ブンガク」という言葉は便利すぎるので
「これもひとつのブンガクなんですよ」と言われると、なるほどなあと思う部分もあったり。
けどそういうことばかりしていると
「ブンガク」という言葉というか、「ブンガク」というものの実態というかが
路頭に迷っていくことになるのですよね。
そして高橋源一郎は、それをまた追いかける。
なんでもかんでもブンガクに引き寄せて、ブンガクが路頭に迷ったところで
自分でブンガクを探しに行く。
楽しそうで
いいんですけどね。